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ーー明くる日……
「龍也君、昨日はごめんね。
鍵、ロッカーにあったよ」
ペロッと舌を出して、朱里が言った。
「どうやって帰ったの」
俺は白々しく聞いた。
あのメッセージは、気づかなかったふりをして、自転車のカゴに返したから。
「憧れてた先輩がね、ほら、陸上部の小宮君。
傘に入る?って言ってくれたの。
へへ、ある意味さ、自転車の鍵を失くして、ラッキーだったかも」
朱里が手のひらを開いて、赤いゴムのついた鍵を見せた。
そう、彼女は自転車の鍵を失くして、新しい恋を手に入れた。
そして俺は、大切なモノを失ったんだ。
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