第1章

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目の前に広がる無残な光景に、もう俺も力尽きて逃げることさえ出来ない。 額から流れる血が生温かいと感じるのは、まだ俺が生きているということ…。 其処ら中に転がる死体。生存者はいるのか?町は跡形もなく破壊され、廃墟と化している。 炭になった木が並ぶこの道は…ああ、そうか、桜並木だ…。 幻影を見る…柔らかい風に淡いピンクの花弁が舞い、行き交う人々の心に優しさを届ける。 小さな子供を肩車した親子連れ、ひらひらと舞い踊る花弁が1枚、父親の頭で一休み。小さな手でそっと摘まんで枝に返そうと手を伸ばす。微笑ましい光景。 ツツーッと涙が頬を伝う…。 全て消えた…。 あの得体の知れない生き物の所為で…。
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