旅立ち

2/6
前へ
/13ページ
次へ
金曜日の夜。冷蔵庫の在庫一掃整理のチャーハンを食べながら母が言った。 「実家に戻ろうと思う。」 いよいよか。 父と別れてから常に覚悟していたこと。 両親の反対を押し切って結婚して地元を出てきた母だから、離婚後も横浜に留まった。 仕事のこととか私の学校のこととか理由はたくさんあったけど、意地もあったんだと思う。 「おばあちゃんの具合はどうなの?」 「あんまり変わらないんだけどね。あそこは車がないと買い物も不便だし。それに…家事するなら女手じゃないと。涼子のとこは小さい子がいるしね。」 母の兄妹は実家からそう遠くないけれど歳が離れているので、従兄弟も伯父のところは30代、叔母のところは10代と開きがある。 「仕事はどうする?」 母は介護士をしている。 「グループ会社のホームがあるから大丈夫よ。あんたはどうなの?派遣会社で向こうの仕事探してもらう?」 「うーん。通えない距離じゃないから今のとこで続けるよ。」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加