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すっかり日も落ち、いい具合にお腹も空いた夕食時。
今日はパパもお仕事が早く終わったみたいで、珍しくテーブルには家族五人、勢揃いしていた。
私たちの目の前には、ママお手製の料理がずらっと並ぶ……心なしか、いつもよりちょっとだけグレードアップしているような。パパが帰ってきてるからなのかな。
そんな美味しそうな料理を味わいつつ、私はパパに声をかけたのだった。
「ねぇ、パパー」
「ん、どうした」
食指を休ませず、なんだかそっけない返事。
ちゃんとこっち見てほしいのに。
「明日のことなんだけど……ちゃんと来てくれるよね?」
「明日?」
ここでようやく、パパは手を止めて、私の方を向いてくれた。
この反応……もしかして忘れてるんじゃ……。
「授業参観だよー……忘れちゃったの?」
「あー……そうか、もう明日だったか」
私は、あえてちょっと不機嫌な感じを出して、パパを見つめてみる。
するとパパは、左手を顎に当てて、視線を斜め下に……気まずいのか、あからさまに目を逸らしたね。
「やっぱり忘れてたんだー! ひどーい、前々からメール入れといたのにー!」
これには私も怒っちゃうよ! ちょっと強めに、怒ってます感を出しつつの糾弾!
パパも焦った様子で、とっさに言葉を返す。
「い、いや、忘れてなんかないぞ!? ちゃんと明日は休み取ってあるし! ただ、もうそんな時期になったんだなーと……」
焦り方が露骨にすごい。
なんか、一気に毒気を抜かれた気分というか……怒れなくなっちゃったよ。
「もー……まあ、明日ちゃんと観に来てくれたら許してあげるけど」
「ああ、わかってる。今年は必ず行くから」
パパは、まっすぐに私を見つめてそう言った。
その言葉は、偽りなんて微塵もない本心から出たものだって、私にはわかる。
……でも、そう言って結局、初等科の三年間は一度も来てくれなかったんだよね……。
パパのお仕事がとっても忙しいし、その一つ一つが大事なことだっていうのはわかってるから、仕方のないことだって頭では理解してる……納得もしてるし、もう終わったことを責めるようなことはしたくないけど。
……やっぱり、少し寂しかったから。
今年は大丈夫だよね。
来てくれるといいな。
学校でちゃんとお勉強してるところ、パパにはちゃんと見てもらいたいから。
私は大丈夫だよって……一番伝えたいひとだから。
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