参観ペアレント

2/29
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
すっかり日も落ち、いい具合にお腹も空いた夕食時。 今日はパパもお仕事が早く終わったみたいで、珍しくテーブルには家族五人、勢揃いしていた。 私たちの目の前には、ママお手製の料理がずらっと並ぶ……心なしか、いつもよりちょっとだけグレードアップしているような。パパが帰ってきてるからなのかな。 そんな美味しそうな料理を味わいつつ、私はパパに声をかけたのだった。 「ねぇ、パパー」 「ん、どうした」 食指を休ませず、なんだかそっけない返事。 ちゃんとこっち見てほしいのに。 「明日のことなんだけど……ちゃんと来てくれるよね?」 「明日?」 ここでようやく、パパは手を止めて、私の方を向いてくれた。 この反応……もしかして忘れてるんじゃ……。 「授業参観だよー……忘れちゃったの?」 「あー……そうか、もう明日だったか」 私は、あえてちょっと不機嫌な感じを出して、パパを見つめてみる。 するとパパは、左手を顎に当てて、視線を斜め下に……気まずいのか、あからさまに目を逸らしたね。 「やっぱり忘れてたんだー! ひどーい、前々からメール入れといたのにー!」 これには私も怒っちゃうよ! ちょっと強めに、怒ってます感を出しつつの糾弾! パパも焦った様子で、とっさに言葉を返す。 「い、いや、忘れてなんかないぞ!? ちゃんと明日は休み取ってあるし! ただ、もうそんな時期になったんだなーと……」 焦り方が露骨にすごい。 なんか、一気に毒気を抜かれた気分というか……怒れなくなっちゃったよ。 「もー……まあ、明日ちゃんと観に来てくれたら許してあげるけど」 「ああ、わかってる。今年は必ず行くから」 パパは、まっすぐに私を見つめてそう言った。 その言葉は、偽りなんて微塵もない本心から出たものだって、私にはわかる。 ……でも、そう言って結局、初等科の三年間は一度も来てくれなかったんだよね……。 パパのお仕事がとっても忙しいし、その一つ一つが大事なことだっていうのはわかってるから、仕方のないことだって頭では理解してる……納得もしてるし、もう終わったことを責めるようなことはしたくないけど。 ……やっぱり、少し寂しかったから。 今年は大丈夫だよね。 来てくれるといいな。 学校でちゃんとお勉強してるところ、パパにはちゃんと見てもらいたいから。 私は大丈夫だよって……一番伝えたいひとだから。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!