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授業参観の日から一夜明け、本日は私フィナが主人格として登校し、授業を受けることになっています。
前日の、不安であったり、緊張であったり……そんな学内を漂っていた独特の雰囲気はすっかり抜かれ、いつもの日常を取り戻した様子です。本日からはまた、しばらくはいつも通りの尊い時間が流れゆくことになるでしょう。
当然、私もその例に漏れず、流れる日常の中に身を投じます。朝はカレン、ミヅキと合流して共に学校へ赴き、真面目に授業を受けルミ先生の話に耳を傾け、休み時間にはヤミナやエアリも交えて楽しく会話に花を咲かせる……表に出て学校へ通うようになり三月以上の時間が経過しましたが、この青春と呼べる日々にもだいぶ慣れてきたように思えます。
そしてお昼時、お弁当を持ち寄って、いつもの五人で昼食を摂っているところ、ミヅキがこんな発言をしたのです。
「聞いてくれ、みんな! 私、合宿がしたい!」
「合宿ぅ……? なんなのだ突然。藪から棒に」
ミヅキ以外の四名がはてなマークを頭上に浮かべる中、代表するようにヤミナが聞き返しました。
確かに、突然のことではありましたが……皆、頭ごなしに否定するようなことは致しません。どういうことなのか、ひとまず事情を伺うことにしましょう。
「別に急な話ってわけじゃないぜ。これにはちゃんとした理由がある。ほら、こないだヴィスタ師匠の家行っただろ? そん時、ユナさんが魔法戦競技会のポスター持ってきてくれたの覚えてる?」
「もちろん! その大会のジュニアクラスに参加するために、ヴィスタ師匠に認めてもらう……っていうのが、直近の目標でしょ?」
ミヅキ、そしてカレンの捕捉した通り、私にもそのような記憶があります。
つまり、ここから導き出される結論は……。
「そう! 大会に出て、勝ち上がる実力を身に付ける、そのための合宿だ!」
グッと拳を握り込むミヅキは、その言葉にも力が篭ります。
そして、ミヅキの提案にも合点がいきました。
「なるほど。確かに、共に多くの時間を過ごすことで……その分特訓の時間を増やすことができますね。集中的に実力の強化を図るには、いいアイデアだと思います」
「そうだろそうだろ! 同じ窯のメシを食い、同じ屋根の下で眠ることで、私たちの絆もパワーアップだ!」
普段から溌剌としているミヅキですが、今日はまた一段と元気です。瞳の中に炎を宿し、気合十分、といったご様子。
それほど合宿をやりたいのでしょう。その思いが、こちらにも熱いほど伝わって参ります。
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