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時は同じく、場もほぼ等しくして森の中。
明るい茶色の髪を肩辺りまで垂らした、小柄な少女も同じ状況に立たされていた。
「いっつ……意味わかんない」
「飛ばし」の酔いで朦朧とする頭をかかえ、側の木へと身体を預けて座り込む。
「なんなのマジ。血ぃかかったし」
先程の「開会式」での一件により、返り血を浴びてしまった。飛沫程度の汚れだが、白を基調とした制服にはよく目立つ。幸先の悪さを感じつつ、もしかしたら今日の運勢は悪いのかもね、と余計な不安を心に宿す。
「君」
だから震えた。背後、しかも頭上から聞こえたその声に。
「ひっ……」
「声はあまり出さないで」
淡々と告げられる。既に優先権はあちらにある。なので彼女はもう、黙るしか無かった。
「素直でいいな、じゃあ早速だけど――」
続く言葉を考えて、覚悟を決めた。もういい、殺されるならそれでいい。
夢なら覚めるだろうし、夢じゃないのなら、せめて一思いに終わって欲しい。
「ちょっとさ、一緒に荷物確認しない?」
「……へ?」
見上げた先には、静かに微笑む顔があった。
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