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「なんで? なんでなんで、あんな角度で声かけるわけ? 意味わかんない」
「悪かったって、それは。でも最速でコンタクト取りたかったんだよね」
「それもなんでなの? マジ、納得させてくれなきゃ怒るから」
「はいはい」
森林地帯。木々の生い茂る中でも、少しスペースのある場所に座り込む男女がいた。逢坂秀都(あいさか・しゅうと)と、彼が森の中で見つけた少女、高坂星華(こうさか・せいか)。どことなく違和感を感じつつも、秀都は星華との意思疎通を図ることに成功した。
「まあ、なんでかな。例えば君、自分の特殊能力ってやつ、わかる?」
「いや、全く」
「だよね。俺もまだわかんないし、でもさっき体育館みたいなとこにいたあの女の腕力なんて、普通じゃないでしょ」
「うん。マジ意味わかんない」
「語彙力……」
「は?」
「いや、それでさ。あんなの見せられたら、他人が能力とやらを把握しちゃう前に接触したいじゃん」
「あー……頭いいね、アンタ」
「まあそれと……この荷物? の中身の確認をさ、同時進行したくて」
秀都は、殆ど嘘は言っていない。星華が初めに目に入ったからこそ声をかけたのだし、荷物の確認を同時進行したかったのも本心だ。
それでも、最初に見つけたのが星華ではなく、例えば屈強な体格の男性等であった場合は、声もかけずにやり過ごしただろう。初めに声をかける相手として、最悪の場合を考えた時に肉弾戦になっても難なく制圧可能な存在、というのが、秀都が決めていた条件でもあった。
「まあ……そういう事なら……納得してあげる」
「じゃあ、開けますか。この派手な荷物」
「行動早っ」
ゲームマスターとやらに支給された荷物。それはリュックサックの体を成していて、秀都と星華では色が違っていた。秀都のものは黒、星華のものは青。
「つーかあたしのリュック、クッソ目立つんですけど」
「それは同感」
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