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開幕していた。
不可解、横暴、加えて理不尽な殺し合いは既に、意識の中に埋め込まれていた。
「ごめん、なんて?」
「ああ、言い方が悪かった? だからさあ……」
星華は「はぁ」とため息一つ。
何を今更、やれやれとでも言わんばかりに口を開く。
「命を――刈り取りに行こうって言ってんの」
あの不気味な怪腕少女と同じ口調、同じトーンで、命を刈り取るなどと平然と言い切る目の前の少女。
秀都は僅かに面食らった。
「まあ、アンタと喋ってある程度落ち着いたし、こっからは気合入れていかなきゃね!」
「いや、待って待って」
「なによ」
「お前……、……乗ってんの?」
「乗って……? え? 何言ってんの? ルール聞いてなかったの?」
「まあ、そうだけどさ。殺すって、お前。良いのかよそれで」
「ごめんアンタが何言ってるかわかんない。あたしと組みたくて声かけてきたんじゃないの?」
会話が成り立たない。このゲームへのスタンスの相違が生み出す会話の軋み。秀都は理解できない、自分よりも恐らくニ、三は年下であろうこの少女が、何の躊躇も葛藤もなく、人を殺そうなどと言うのだから。
「ああ、だからか……」
星華と話す中で生まれていった違和感。初見の際、想像以上に驚かれた事。どちらも今思えば納得がいく。
恐らく彼女が至近距離で目撃したであろう体育館での男の殺害を経てなお、平然と会話が出来るこの胆力は決して「誰かに殺されるかもしれない」という恐怖からくるものではないのだ。この少女の頭の中はきっと……。
「殺らなきゃ、殺られるんだよ?」
有無を言わさない好戦的な視線。その眼差しに、徐々に敵意の色が混ざっていく。想像以上に驚かれた事も、ここが既に人殺しが起こりうる状況だと理解していたからこそなのだろうか。あの時点にはまだ、彼女の頭の中には「殺されるかもしれない」があったのかもしれない。
だが、会話によって敵意を排除していく事によって、今こうなっている。状況の認識が真に甘かったのは、星華の方ではなかったのだ。
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