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「暗いな、ここは」
「そうかな? ふふふ」
「ああ、暗い……泣きそうだよ」
「あはは、またまたご冗談を。泣きそうなのは別の理由かな?」
暗い。何も見えない。
その暗黒に支配された部屋の中央で、彼女の手だけが七色の光を纏い始める。
……頭が痛い、この女と会話する時はいつもそうだ。
「ではキミが……ははは、今回の贄というわけだ。おめでとう、そしてさようなら」
「ああ、一思いに頼むよ。知っての通り、飼い殺し拒否症なもんで」
「ふふふ、そんな病は聞いたことがないな」
彼女の言う通り、自分はここで最期を迎える事になる。
これから始まるゲームとやらの進行材料だ。語り手としての出演はこれが最初で最後だというのに、気の利いたセリフが出てこない。
「せめて、俺よりも数倍不幸な実験台達の顔くらいは見ておきたかったが」
「ははは、キミ。それは無理だというものだ。順番が違う」
いちいち笑いを含まないと発言できないのか、この女は。本当に癪に障る。
「ああ……取り付く島もない正、論……だ……」
「ふふふふふふ、まあ後は任せておきなって」
彼女の手が俺の頭に乗せられて、段々と視界が遠のいていく。
薄れ行く意識を手放しながら、哀れな少年少女達の未来を憂う。なにせこれから始まるのは、狂喜乱舞の殺し合いだ。自分はここで退場することが出来て、ある意味幸せなのかもしれない。
「呼び集わせしは四十ニ、生き残らせしは三、ってところかな。へへへ」
無邪気な笑顔を顔面に貼り付けて、彼女は創り始めた。
場を、人を。その手に七色の光を宿し、無作為、無秩序に。全てはその掌の上の物語。
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