第1章 移り香

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早朝に連雀寺傍の家を出た美奈子は 西湘バイパスから国道百三十四号線を走り、 鎌倉市内へ入った。 北鎌倉駅に程近い県道沿いに抹茶と生菓子が 名物の「茶房ほおづき」はある。美奈子は ほおづきの練り切りが好きで、鎌倉へ来ると 大抵は寄る。品の良い女主人はしばしば 立ち寄る美奈子の顔を覚え、彼女が訪れると 必ず挨拶に来る。 「こんにちは。」 「あら、今日はおひとり?」 「友達と待ち合わせです。」 「学生時代のお友達が一番いいわね。」
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