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坐り終えて外へ出ると月の光が伽藍を
照らしていた。人のいない夜の伽藍は昼とは
違う美しさだ。空を見上げると満月
であった。今夜は中秋の名月だったのだ。
山門から見下ろしても暗くて海は見えない。
ただ波の音が聞こえるばかりだ。それでも
そこに海があることを感じることができる。
この風では白波が立っているかもしれない。
美奈子は無性に海が見たくなった。エンジン
キーを回すと重く低い音が響く。クラッチを
切り替えてアクセルを踏んだ。あっという
間に速度が上がった。
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