第2章 海からの風

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坐り終えて外へ出ると月の光が伽藍を 照らしていた。人のいない夜の伽藍は昼とは 違う美しさだ。空を見上げると満月 であった。今夜は中秋の名月だったのだ。 山門から見下ろしても暗くて海は見えない。 ただ波の音が聞こえるばかりだ。それでも そこに海があることを感じることができる。 この風では白波が立っているかもしれない。 美奈子は無性に海が見たくなった。エンジン キーを回すと重く低い音が響く。クラッチを 切り替えてアクセルを踏んだ。あっという 間に速度が上がった。
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