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香織は高らかに笑った。
「あなたのほうがずっと怖い女だわ。
あなたと彼女とどちらがfemme fatale
かしらね。」
femme fatale――運命の女。或いは男を
堕落させる悪女。
耀達にとってのfamme fataleは美奈子か、
それとも祥子なのか。そんなことを考え
ながら事務室として使っている部屋の隣の
和室に横たわり、午後一時にアラームを
セットすると程なく美奈子は眠りに落ちた。
美奈子の仕事場である倉澤邸は香織の
仕事場であり住居でもある。当然ながら常に
担当の編集者や取材で訪れる人間が出入り
する。彼らに対応するのも美奈子の仕事で、
表玄関近くの部屋がその用途に充てられて
いる。
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