第3章 砂の城

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香織は高らかに笑った。 「あなたのほうがずっと怖い女だわ。 あなたと彼女とどちらがfemme fatale かしらね。」 femme fatale――運命の女。或いは男を 堕落させる悪女。 耀達にとってのfamme fataleは美奈子か、 それとも祥子なのか。そんなことを考え ながら事務室として使っている部屋の隣の 和室に横たわり、午後一時にアラームを セットすると程なく美奈子は眠りに落ちた。 美奈子の仕事場である倉澤邸は香織の 仕事場であり住居でもある。当然ながら常に 担当の編集者や取材で訪れる人間が出入り する。彼らに対応するのも美奈子の仕事で、 表玄関近くの部屋がその用途に充てられて いる。
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