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「……行ってきます」
「おう」
私は通学のために、お父さんに駅まで送ってもらうようになった。
お父さんの愛車は白の軽トラック。
はじめは恥ずかしかったけど、今ではもう気にしない。
駅前に降りるまでのやりとりもいつもこれだけ。
家から駅までの道中に会話は無くて、
決まったラジオが流れる車内で、私はいつも窓の外を眺めるだけ。
「……学校、楽しいか?」
ある日、いきなりお父さんは聞いてきた。
高校に通うのも慣れてきた、そんな頃だった。
「うん。楽しいよ」
「……そうか」
それだけだった。
再び車内は、ラジオの声だけになった。
別にお父さんと仲が悪い訳じゃない。
ご飯の時も話したりするし、テレビを一緒に見て話し合ったりするから。
だけど、お父さんはもともと寡黙で、毎朝のように繰り返すのは素っ気ないやりとりだけだった。
「……行ってきます」
「おう」
駅に着き、この日も慣れてきた流れで私は改札へと向かった。
不安を胸に抱きながら……
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