第2話―混乱と共に―

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「初恋、か…」 千裕さんからあの話をされた夜。 自宅の湯舟に浸かってその話を思い返していた。 「やっぱりあの話…私、だよね?」 あのスズランの押し花。 あれは確かに幼い頃、いつも行く公園で遊ぶ男の子にもらったもの。 断片的にしか覚えてないけど、確かに3人男の子がいた。 4人でいつも遊んでいた。 つまり… 「スズランの花をくれたのは、あの3人の中の誰かって事になるよね…」 でもその誰かを、思い出せないでいる。 「おかしいなー、あの花もらった時すごい嬉しくて、それで無くさないようにって押し花にまでしたからなぁ…会えば絶対その男の子ってわかると思ってたのに…」 なんで、思い出せないんだろ…。 あの3人の事。 お風呂から上がり、冷蔵庫の方へ行くと キッチンで夜食の用意をしてる母がいた。 いつも帰りの遅い兄の分の夜食だろう。 「…お兄ちゃんは今日も遅いの?」 「ぇえ、そうみたいね」 「ふーん」 「愛ちゃん、なんか最近楽しそうじゃない?」 「ん?そう?」 「普段なら大っ嫌いなお兄ちゃんの事なんて聞かないでしょ?なんかいい事でもあったのかしらね」 母親には何でもお見通しか… グラスに注いだ牛乳を一気に飲み干して、あの3人の事を訊ねる事にした。 「ねぇ、お母さん。昔さ、私とよく遊んでた男の子いたじゃん?…顔とか覚えてる?」 「あー、いたわね。3人とも元気で可愛かったから、子供の頃の顔だけどよく覚えてるわよ。すっごく可愛かったから、今間違いなく男前になってるんじゃないかしら」 確かに… 3人ともかなりの男前に成長してるな… 「そういえば、その中の誰かわかんないけど色っぽいとこにほくろあるなぁって思ってたのよね。その子じゃなかったかしら?愛ちゃんと結婚するって私に直接言いにきたの」 「…ほくろ?」 「そう。この子は絶対女泣かせの男の子になるなあって笑っちゃったもん」 「ふーん…」 第2話―混乱と共に―
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