第2話―混乱と共に―

5/9
前へ
/26ページ
次へ
昼食後 Foolish Heroが今度の夏に出すアルバムのレコーディングをするために 3人はスタジオ入りした。 一人ずつブースに入ってレコーディングをする為、二人は外で待っていた。 デビュー当時からの3人の意向で、音楽は全員で作り上げたいという事から必ずレコーディングは3人でやってるようだ。 最初はリーダーである千裕さんからだった。 「あ、しまった。僕水持ってくるの忘れてた!ごめん一瞬抜けるね」 「次彰くんだからすぐ戻ってくるんだよ」 「はーい」 彰さんが出て行ってしまったので 必然的に私の隣に雄介さんが座ってる事になる。 私は座らず立っていたけど、それでもなんか…その存在感に目を向けずにはいられなかった。 「…だから、さっきから何?」 「え…あ、いや…」 「目障り」 「なっ…!」 「用がないならこっちを見るな。用がないなら話しかけるな。仕事以外で俺に関わるな。…以上、これ以上話さない」 「ちょっと、雄介くん…」 「わかりました。じろじろ見てすみませんでした!」 「ちょっとちょっと愛莉さんまで…」 船橋さんがなだめてくるのを無視して、私は千裕さんのレコーディングに集中した。 と言っても、雄介さんの発言に苛立ち正直レコーディングどころではなかった。 何なの、何なの、何なのよ…!!! アイドルってそんなに偉いの!? 確かに見てたのは悪いと思うけど、それでもあの言い方はないでしょ! けど… 「じゃあ、次雄介くんだね。よろしく」 「はい」 雄介さんがブースの中に入り、ヘッドフォンをつける。 きっと今そのヘッドフォンからは幾万の音が流れ、雄介さんの耳から全身に音という音を送り出してるんだろう。 すぅ…と息を吸う仕草を見せると、一気に声を出す。 私は雄介さんのこの歌声に、とても弱い…。 「また雄介に見惚れてるの?愛莉ちゃん」 「千裕さん…そうですね。本当、さっきまであんなにむかついてたのに。あの声聞いてたら、なんか…どうでもよくなってきちゃう」 「え?むかついてたの?」 「はい。私に仕事以外で話しかけるなと言われ腹が立ちました」 「あー…言いそう」 けど、それらを全部溶かすかのようなあの歌声は 本当にずるい。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加