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昼食後
Foolish Heroが今度の夏に出すアルバムのレコーディングをするために
3人はスタジオ入りした。
一人ずつブースに入ってレコーディングをする為、二人は外で待っていた。
デビュー当時からの3人の意向で、音楽は全員で作り上げたいという事から必ずレコーディングは3人でやってるようだ。
最初はリーダーである千裕さんからだった。
「あ、しまった。僕水持ってくるの忘れてた!ごめん一瞬抜けるね」
「次彰くんだからすぐ戻ってくるんだよ」
「はーい」
彰さんが出て行ってしまったので
必然的に私の隣に雄介さんが座ってる事になる。
私は座らず立っていたけど、それでもなんか…その存在感に目を向けずにはいられなかった。
「…だから、さっきから何?」
「え…あ、いや…」
「目障り」
「なっ…!」
「用がないならこっちを見るな。用がないなら話しかけるな。仕事以外で俺に関わるな。…以上、これ以上話さない」
「ちょっと、雄介くん…」
「わかりました。じろじろ見てすみませんでした!」
「ちょっとちょっと愛莉さんまで…」
船橋さんがなだめてくるのを無視して、私は千裕さんのレコーディングに集中した。
と言っても、雄介さんの発言に苛立ち正直レコーディングどころではなかった。
何なの、何なの、何なのよ…!!!
アイドルってそんなに偉いの!?
確かに見てたのは悪いと思うけど、それでもあの言い方はないでしょ!
けど…
「じゃあ、次雄介くんだね。よろしく」
「はい」
雄介さんがブースの中に入り、ヘッドフォンをつける。
きっと今そのヘッドフォンからは幾万の音が流れ、雄介さんの耳から全身に音という音を送り出してるんだろう。
すぅ…と息を吸う仕草を見せると、一気に声を出す。
私は雄介さんのこの歌声に、とても弱い…。
「また雄介に見惚れてるの?愛莉ちゃん」
「千裕さん…そうですね。本当、さっきまであんなにむかついてたのに。あの声聞いてたら、なんか…どうでもよくなってきちゃう」
「え?むかついてたの?」
「はい。私に仕事以外で話しかけるなと言われ腹が立ちました」
「あー…言いそう」
けど、それらを全部溶かすかのようなあの歌声は
本当にずるい。
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