第2話―混乱と共に―

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「嘘でしょ…」 玄関を見て頭を抱える。 散らばった靴の数々。 散らばったチラシの数々。 そこから先の廊下に続く洋服や下着や靴下… 「汚い!!!!!」 その光景を見て、思わず叫んでしまった。 唯一の救いは、生ごみ系のゴミがない為 臭いがそこまできつくない事だった。 しかし少し潔癖の気がある私は耐えられなかった。 気が付いたら、玄関から順番に掃除を初めていた。  ■ 「…はっ!今何時?」 すっかり掃除に夢中になっていた私は、仕事があるという事を忘れていた。 急いで携帯の時計をチェックすると、時刻は8時ジャストだった。 1時間何も考えず掃除に没頭してもまだ少ししか綺麗になっていないのを見ると この部屋がどれだけ広いかがわかる。 せっかくのいいお部屋がなんてもったいないんだ… そう思いながら雄介さんを起こすために寝室へ向かう。 「えっと、寝室…ここかな?」 扉を開けると、案の定そこは寝室だったみたいで 雄介さんの寝息が聞こえてくる。 「信じられない…掃除機の音聞いてもこんなぐっすり寝れるの?」 寝起きが悪いというのはどうやら本当らしい。 ベッドに近づき、声をかける。 「雄介さん、起きて下さい。雄介さん」 何度声をかけても起きる気配はない。 少しためらったが、強めに体をゆすった。 「雄介さん!仕事ですよ、起きて準備して下さい!」 声を張っても、体を揺すっても起きる気配がない。 だんだんイライラしてきた私は、今よりも大きな声を出してもっと強めに体を揺すった。 「雄介さん!起きて下さい!!」 「……チッ…」 小さく舌打ちが聞こえてきたかと思ったら、視界が大きく動いた。 「…え?」 「……うるせぇ…」 両腕を掴まれ、ベッドに押さえつけられる。 これは俗に言う… 押し倒されて、る……? 「寝かせ……ろ…お…眠……」 ゆっくり顔が近づいてきたかと思うと、雄介さんは私の体の上で再び寝始めた。 「え、ちょ、雄介さー…ん?え、ちょっと!!重たいしどいて下さい!雄介さん!?ねぇ!おーきーてー!!」 そのあと、思い切りビンタしてようやく雄介さんは目を覚ましてくれた。
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