第3話―疑惑の眼差し―

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「今日までありがとうね、愛莉さん。だいぶ無理させてしまったと思うけど、想像以上の仕事ぶりで驚いたよ。さすが社長の姪っ子だ」 「いえ、そんな…船橋さんのサポートと、3人のサポートがなければここまでやれませんでした。本当に…ありがとうございました」 3月末日。 明日、船橋さんはプロダクションFlowersを退社する。 その小さな送別会を5人で行った。 叔母さんは忙しい為、最初に顔を出し 少しだけ話をして仕事に戻り、結局5人でとなってしまった。 「でもこれで、僕は心置きなくこの会社を去れるよ。明日からも、頑張ってね」 「船橋さん…」 「え、愛莉ちゃん?」 「あー、船橋ちゃんが愛莉ちゃん泣かせた!」 「え、僕!?あの、ご、ごめんね?」 「すみませ…そんなんじゃ…」 なぜか、涙が止まらなかった。 この業界の事、3人の事、社会人として… それをこの1ヶ月で私に教えてくれたのは船橋さんだ。 短い間だったけど、船橋さんへの感謝の気持ちは計り知れない。 「今日まで、本当にありがとうございました」 「…こちらこそ。3人の事、頼んだよ」 「はい」 私はもう一度、深く頭を下げた。  ■ 「じゃあ、4人共今日は本当にありがとう。これからも陰ながら応援してるから」 「デビューから今日まで、お世話になりました」 「また遊びに行くからね!」 「…ありがとうございました」 「うん…じゃあ、また!気を付けて帰ってね」 3人が頭を下げている姿を、私はしっかりと目に焼き付ける。 次は、私の番なんだ。 船橋さんが育てたこの3人を、私の手で今以上に大きくするんだ。 初めてこの3人に会った時の気持ちを、改めて胸に刻んだ。
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