第3話―疑惑の眼差し―

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「じゃあ、私はこれで。失礼します」 「え、送ってくよ?女の子一人じゃ危ないよ」 「ありがとうございます、千裕さん。でも車なんで大丈夫ですよ。今日呑んでないですし」 「じゃあ、俺送ってって」 「え…?」 車に向かおうとすると、雄介さんに引き留められる。 その姿に私も他の2人も驚いていた。 「え、でも…」 「終電逃した」 「え!?なんでそれ早く言わないんですか!」 「え、ちょ…雄介?」 「ね、ねぇ千裕…雄介どうしちゃったの?」 「さぁ…?」 2人がそんな会話をしてるとは知らず、私は雄介さんを叱っていた。 「あの場で言いづらかったのはわかりますけど、そういうのはちゃんと言って下さい!ったく…仕方ないから今回は送ってきますけど、次からちゃんと言って下さいよ?」 「わかった」 本当にわかってるんだか… たまにこういう子供っぽい姿を見ると、やっぱりカメラの向こうの雄介さんは作り物ではないと思わされる。 そう思うとなんだか突き放す気になれない私は、もしかしたら雄介さんに一番甘いのかもしれない。 小さく溜息をつき、後部座席に雄介さんが乗ったのを確認してから 雄介さんの自宅へと向かった。  ■ 「雄介さん?着きましたよ」 声をかけても雄介さんは動く気配がない。 「あの、着きましたけど」 「……気持ち悪ぃ」 「え、大丈夫ですか?」 「酔ったかも…」 「嘘…っちょ、大丈夫です?肩かしましょうか」 「頼む…」 後部座席の扉を開け、雄介さんに手を差し出し腕を私の肩に回す。 …あれ、軽い? 男の人って、こんな軽かったっけ… 少し疑問に思いながらも、負担がなるべくかからないように雄介さんの部屋まで引っ張っていった。
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