第3話―疑惑の眼差し―

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「雄介さん、大丈夫ですか?部屋着きましたよ。とりあえずベッド横になって下さい」 「うん…」 寝室まで連れていき、横にさせた後、勝手にいじったらまずいかなと思いながらも、冷蔵庫を開ける。 ……予想はしていたけど、何も入ってない。 この大きい冷蔵庫は何のためのものなんだ。 仕方なく食器棚からグラスを取り出し、蛇口から水を注ぐ。 一連の動作をしていると、背後に人の気配を感じて振り返る。 「ゆ、雄介さん?起きて平気なんですか?」 「平気」 「よかった…はい、とりあえず水飲んでゆっくり休んで下さい。明日はオフですし」 雄介さんは手渡したグラスを持ったまま、じっと私を見つめてきた。 「…な、何ですか?」 「…本当に、あの時の子じゃないのか?」 「え…」 「あんたが違うって言ったから、そうだと思おうとしたけど…でもだったらなんであんたとあの子が重なるんだ。さっきもそうだ、俺が体調悪いとわかったらすぐ助けてくれるとこ。その時のセリフ。表情…何から何まで同じなんだよ!…なぁ、本当に違うのか?」 苦しそうな顔で、声で、質問する雄介さん。 頼むからそうだと言ってくれ。 表情からそんな声が聞こえてきたような気がした。 でも… なんでそんな苦しそうなの? なんでそんな悲しそうな顔してるの? 私がその子だとしたら… あなたは一体どうしたいの…? 息をのみ、私はなるべく声が震えないように言葉を発した。 「雄介さん…あなた、私がその子だったらいいのにって思ってるんですか?それとも、私がその子じゃなきゃいけない何かがあるんですか?」 「…っ」 図星をつかれたのかのように、一瞬驚くとすぐに私から目を反らした。 「…どうなんですか?」 「……ごめん。違う…違うんだ…」 「何がですか?」 「ごめん…俺ちょっと焦ってたかも…忘れて…」 「雄介さん…?」 「帰ってくれ」 「え、でも…」 「帰れ!!」 急に怒鳴られ、驚いてしまった私は逃げるように雄介さんの家を出た。 何だったんだろ、さっきの雄介さん… ごめんって何?あれは…誰に対しての謝罪だったの? 焦ったって、どうして…? ……わかんないよ。
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