第3話―疑惑の眼差し―

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次の日も、私の頭の中から雄介さんが消えなかった。 あの時、雄介さんは明らかに動揺していた。 一体、何だったんだろう? 「やっぱり、雄介さんなの…?この花をくれたの…」 押し花を入れた写真立てを手に掴み抱きしめる。 抱きしめたところで、その答えはやっぱり出てこなかった。  ■ 「愛莉ちゃん、あの後大丈夫だった?」 「え?何がですか?」 「ほら、一昨日雄介送っていっただろ?何かされたりしなかった?」 仕事の合間、千裕さんが心配そうに私に声をかけてきた。 「何もなかったですけど…どうかしたんですか?」 「よかったぁ…珍しくあいつマネージャーに手を出すのかと思って心配してたんだよ…」 「……え?」 「え、もしかして船橋さんから聞いてない?」 千裕さんは困ったような顔をして私に耳打ちをしてきた。 「あのね、雄介も彰同様手が早いから気を付けた方がいいよ」 「は…」 「え、本当に気づいてなかったの?終電逃したなんて嘘だよ。あいつ、移動に電車なんて使わないし。いつもタクシーだから。あれが雄介の常套手段」 「嘘…」 「呑みいった後絶対酔ったとか言って、女の子の肩借りてそのままホテル連れ込むの。でもよかった、愛莉ちゃんにまでそれしてなくて」 ちょっと待て。 ………まんまそれやられたんですけど!?!? そういう事か…だから肩貸した時ちょっと軽かったのか つまり私は 雄介さんに騙されたという事だよね…? 「そろそろ撮影の時間じゃねぇの?」 「雄介メイク終わったんだ、じゃあ行こっか」 「俺も終わったよー」 「…ん?愛莉ちゃん?行くよ?」 沸々と怒りがこみ上げてきて、雄介さんを睨みつける。 「なんだよ」 「さいってー…」 「は?」 「決めた。もう二度とあなた達なんて信用しない」 「…達?え、まさか俺も!?」 「当たり前でしょ!千裕さんも同罪ですから!」 「なんで!?」 3人を無視して私は先をどんどん歩いていく。 決めた。 私はもう、この3人と仕事以外で関わらない。 誰があの男の子だとかどうだっていい。 この3人を、より大きくする事だけを考える。 後を歩いてる3人を背に感じながら、強く決意した。 第3話―疑惑の眼差し― END
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