第1話―それは突然に―

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「ちょ、ちょっと!!愛ちゃん落ち着いて!」 「うるさい!落ち着けるわけないでしょ!」 重たい機材を運ぶ人 忙しく廊下を歩く人 それら全てを無視して私は突き進んだ。 私は今、激しく怒っている。 「ちょっとおばさん!!!」 目的の場所について、ノックもせずにドアを勢いよく開ける。 そこには呑気に爪を研いでいる叔母の姿があった。 「あら、愛莉ちゃん久しぶりじゃな~い。元気してた?ちょっとこっちきてお顔をよく見せて」 「あのねぇ、私はゆっくり話をしにきたんじゃなくて……ガッ!!」 ずかずかと叔母の元へ近づくと、勢いよく顔を掴まれる。 「でもね、愛莉ちゃん…おばさんじゃなくて、"お姉さん"でしょ?嫌だわこの子ったらどこでそんな言葉覚えてきたんだか」 「姉さん…愛ちゃん窒息しそうだから離してあげて…後で私からよく言って聞かせとくから…ね?」 「あらそ」 顔を離されたかと思うと、何事もなかったかのように叔母は元いた自分の席へと腰かける。 「あのおばッ…お姉さん、どういう事なの?」 「何のこと?」 「しらばっくれないで!!」 とぼける叔母の前に一枚の用紙をたたきつける。 「これ、どーいう事か説明してもらっていい?」 「あらやだ、うちの人事課仕事はやーい。もう愛莉ちゃんのとこに届いてたのね~」 「あのね……」 叔母に叩き付けた用紙 それは、採用通知書。
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