第1話―それは突然に―

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「私この会社受けた覚えないんだけど」 「え、そうなの?履歴書あるわよ?」 「出した覚えもないんですけど」 「え~でも実際手元にあるしぃ~」 叔母の発言にイライラしながら叩き付けた採用通知書を握りつぶす。 佐藤愛莉(21) 今、ブラック企業への就職が決まりそうです。 「ま、まぁまぁ愛ちゃん丁度よかったじゃない。内定まだどこからももらえてないんでしょ?ポジティブに、ね!」 「…まさかお母さん?この人に履歴書送ったの」 「へ…え~…?な、何のこと~…?」 「しんっじられない!何勝手な事してんのよ!」 「だ、だって、姉さんが…」 「は?」 「そうお母さんを責めないで、愛莉ちゃん。私これでもあなたの事買ってるのよ」 「どういう事…?」 訝しげに叔母を見ると、近づいてきて私の肩に手を置いた。 「愛莉ちゃん、あなたはいい目を持ってる。人の才能を見抜く力がある。だから私は、あなたが大人になるのをずっと待ってたのよ」 まっすぐ私を見る叔母の目に嘘はない事が、嫌というほど伝わってきた。 でも、だからと言ってこの会社に入る気にはなれない。 「…私そんな才能なんてないし、いくら叔母さんの頼みでも、この会社は無理だよ。絶対無理…」 「そんな事ないわよ。この私が大丈夫って言ってるのよ?無理をしてでもあなたは欲しい人材だって、そう言ってるの。だから、ね?お願い、愛莉ちゃん」 「叔母さん…」 叔母である柚木冴子(45)が経営するこの『プロダクション Flowers』は 数々の実力派俳優や、有名アーティスト等を多数排出してきた大手芸能事務所。 叔母はたった一代でこの事務所をここまで大きくした凄腕の若手社長。 叔母さんは、そんな会社に私を入れようとしているのだ。 結局その敏腕社長、叔母の熱意に根負けをしてしまい、私愛莉はこの会社へ内定が決まってしまいました。
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