採掘屋とニューエデン

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買いオーダー、つまりその品をいくらなら買いますよと自分で主張する訳だ。レトリーバーで言うなら2000万iskは高いから買わないが、1800万iskなら買う、といった具合だ。売り手の中には利益の出し方に拘る者も居る。単価を高くするか、単価を安くして数を売るか、だ。勿論、単純に考えた場合、高単価で数売れるのが一番利益が出るが、残念ながらそれだと買い手が付かない。売買とは取引であり、契約だ。双方が納得・合意して初めて成立する。このオーダー制でニューエデンの経済は成り立っている。  採掘用フリゲート、ベンチャー。小型なのでカーゴに収納できる鉱石の量も多くはない。しかし、それでもあたしは少しずつ金を溜めて、目標としていた採掘艦レトリーバーを購入することができた。その時のあたしは少し浮かれていたのかもしれない。レトリーバーのカーゴに収納できる鉱石の量は値段だけで言えば400万isk、採掘量もベンチャーの比ではない。効率や売上が目に見えて上がるのだから。後、そこがハイセキュリティエリアだと言うので安心していたのかもしれない。  セキュリティレベルについて少し話しておこう。このニューエデンにはセキュリティレベルと呼ばれる物が各星系につけられている、分かりやすく言えば治安の良さだ。0.0~1.0の10段階で表され、数字が大きいほど治安が良いとされている。0.5~1.0はハイセキュリティエリア(通称ハイセク)と呼ばれており、四大国家の投資を得て設立された CONCORD(コンコルド)と呼ばれる警察組織がおり、CONCORDは犯罪者や、アウトローを攻撃するため、最低限の治安は維持されている。もしあたしがハイセクで、何も関係のない船舶に攻撃をしたとしよう。攻撃をした途端、あたしはステーションやスターゲートのセントリーガンに問答無用で撃たれ、警察の船舶があたしを攻撃すべく駆けつける。どんなに高性能な船やモジュールを以てしても、あたしの船はあっという間に宇宙の藻屑と化すだろう。その為、特殊な事情を除いて、ハイセクでの無差別な攻撃行為は、少ない。そう、『少ない』だけで皆無ではない。最低限の治安はCONCORDによって守られているが、絶対に他の船に攻撃できないわけではない。結果的にCONCORDに船を撃沈されてしまうが、撃沈されるまでの間は攻撃が可能なのだから。
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