縁線めぐる物語

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夜勤明けで帰宅、これからやっと眠れるって所で、朝の喧騒と出くわしてしまった。 玄関で息子達に会ってしまったのだ。 「あ、幸一おはよう、しっかりな」 「んー」 「由美子も、頑張ってな」 「‥‥」 かったるい登校時のいつもの情景だ。 「いってらっしゃい」 挨拶を返すのはおろか、目を見ようともしない息子と娘。 多感な年齢、18、16。 だけど親子になってもう4年になるんだからいい加減改めて欲しいと思うよ、その子供じみた態度を。 「ふぅ」 正直、うんざりだ。 そう、付き合っていた彼女には子供がいただけの話、勿論承諾して結婚したが、僕は当時まだ36歳、しかも童顔なうえに背丈も幸一に負けている、仕事も老人ホームの介護福祉仕でパッとしないと見られているのか、僕は彼らにとっての理想とは随分かけ離れた父親をしているのだろう。 「お帰りなさい、良介」 妻の美津子が普段通りに出勤する。 今年46歳になるがまだまだとても綺麗だ。 「うん、ただいま」 「私行くけど、お昼作ってあるから食べてね」 「ああ、ありがとう」 各々の場所に行ってしまった家族達、戻って来たのは、僕と静寂、作りおきの昼飯を朝飯にした。 疎外感が拭えない。 父親ってただの収入源なだけなんじゃ。 本当の家族もこんなものなのだろうか。
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