縁線めぐる物語

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なんだか目が冴えてしまって、昂ってしまった感情を静めたく僕も出掛ける事にした。 何の気なしに駅に向かって歩いて行く。 こんな時パチンコなんかする人も多いと聞くが、僕はギャンブルはあんまり好きじゃない。 そのまま電車に乗って川崎大師に行くことにした。 ちょっと前に美津子に前厄だから御参りくらい行きなさいよと言われていたのを思い出し、僕としてはあまり気にもしない事だったのだが、ついでに家内安全でも祈願しておこうかと、ちょっとした旅行気分になっていた。 電車を乗り継げばすぐに着いてしまう、家から割りと近い所にある有名寺院、何度か足を運んではいたのだが、ここ最近は御無沙汰していた。 「やっぱり良いなこうゆうの」 ついつい声に出してしまった。 まだ開いてない店もある仲見世を通って、境内にたどり着くと、その趣を見渡して楽しんだ、特に平日の午前中とあって参拝客も観光客もまだ少ない、五重塔を横目に大本堂を目指す。 一度家族でこの大本堂を訪れた事がある。 結婚してすぐの事だ、皆で護摩祈祷をした、あの時は皆の幸せを本気で願った、皆の幸せこそが僕の幸せであると信じていたから。 でも同情していただけだったのかな、今さらだけど結婚した理由も。 だったら、打ち解けるはず無いよな。 幸一も由美子も実父の事を忘れられないだけで僕の事が嫌いって訳では無いと思うし、美津子も本当に子供が好きで愛している、それで良いと思う。 ただ、僕は少し寂しい。 もし願いが叶うなら この虚しさを埋めてくれないか
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