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動き始めた浦賀行きの列車の中で、遅目のランチの事よりも頭の中は彼女の事でいっぱいだった。
別に故意に僕を追っている訳では無いだろう、僕に用があるとは思えない、ならばこの妙な巡り合わせは本当にただの偶然なのだろうか。
分からないけど僕は彼女が気になって仕方がない、でも彼女が初恋の女性という事は無いだろう、年齢が違いすぎるから、好きとか惚れたとかそう言う理由でも無いと思う。
なぜだろうか、彼女に会いたい、彼女に会えばその理由が分かる気がしたから。
揺れる列車の中で、そんな事をずっと考えていたら、いつの間にか僕は眠ってしまった、そういや夜勤明けだ無理もない。
「起きてあなた、次降りるのよ」
彼女が笑って言った。
ちょっとした震動で不意に起こされるまで、まるで永い旅をしているような夢を見ていた。
今までの人生とは違う、彼女が傍にいる人生だった。
次の駅で降りようと決めた。
ただお腹が空いたからって訳じゃ無い、何か感じて。
妙な縁を信じて。
堀ノ内駅で停車した浦賀行きから一番線のホームに降りると、すぐ後に別の列車がやってきた。
二番線ホームに三崎口行きの快速が停車した、その列車のドアが開くと、そこから白いワンピースを翻し、彼女が降り立った、ユルく巻いた長めの髪をふわりとはずませ。
「あ‥‥」
彼女が僕の存在に気づくと時間が止まったように、お互い動けないでいた。
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