第三章

57/61
前へ
/296ページ
次へ
「これを見てみろ」 並べて、一緒に置いていったパレードの行程表も見せる。 朝にはシュメール城を出て、およそ半日をかけて周辺を回って神殿に戻ってくる予定になっていた。 「私は、アスラ王の隣で全てに付き合わなくてはいけない。連絡を入れるなら、途中に寄る何ヵ所かを目安にするしかないな。後方にお前達用の馬車を用意するとも言われたが、先に言った通りに断った。ヘルマンは連れて行くが、護衛は精鋭を残していく。何かあったら頼りにしろ」 他にもいくつか確認し、ファウストが最後の念押しで用心するよう忠告したところで、ヨシュアが一つ質問をしたいと発言した。 許してやると、パレードの参加を決めたのはなぜかと聞いてくる。 「唐突な申し出ならば、適当な理由をつければいくらでも回避できたのではないですか」 「まあな。しかし、こんな事で関係を悪くする必要もあるまいと思ったまでだ」 「では、今回の事でウェイデルンセンが得る利益はなんですか」 商人の息子らしい損得勘定と、貴族の息子らしからぬ率直な物言いに、ファウストは苦笑したくなる。 「あえて挙げるのなら、知名度の普及と、大国と相互に敬意ある関係を見せつけられる事だな。その反面、親密すぎると疑わられれば中立の立場のオアシスに影響を及ぼしかねない危険もあるが、今のところは利益の方が大きいと踏んでいる」 ファウストも率直に答えてやると、ヨシュアは素直に納得をした。
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加