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「皇帝神以外を奉る巫女だ。私が絶対で唯一の神聖国では認められぬ存在だ。しかし、この土地にも未だ八百万の神を崇めていた統一前の名残はあるし、近代ではウェイデルンセン出身の移住者も少なくない。それに、ティアラ姫はオアシスのレスター代表共々人気があるからな。排除を宣言すれば、私の株が暴落する心配をしなくてはならん」
アスラは淡々と回答を続ける。
「風土的には、多民族が混在する我が国は他文化の許容範囲が広いと言えよう。但し、信仰心の厚い者には良く思われていない事も確かだ。特に、この城は神殿と通じている。充分に注意しておくのに越した事はないだろう」
ヨシュアは、その回答で満足しておいた。
「ごちそうさまでした。今夜は、これで失礼させていただきます」
「ああ。こちらも楽しい時間を過ごせた」
女中に部屋まで送るよう申しつけたアスラは、久し振りに真っ直ぐに目を合わせてきた少年の背中を見送り、口元を緩める。
ぱたりと扉が閉まり、少年がそれに気付く事はなかった。
「綺麗に平らげていったのはファウスト王以来か」
窓に目を向ければ、細やかな雪がちらついている。
「積もるほどではないな」
なんの感情も込めずにつぶやいたアスラは、一つだけ残っていた菓子をひょいと摘まみ上げると、自分を探しにくるだろうサイラスの為に腰を上げて部屋を出ていった。
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