第三章

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そんな風に考える時は決まって、自称幼馴染みを語ってくれる優しすぎる側近の顔が浮かんだ。 幼い頃でも、仕事ぐるみの付き合いでしかなかった聡いシモン。 ファウストには特別な遊び相手でも、向こうにとっては特別なお客様の一人なだけ。 それなのに、レスターは王になったばかりのファウストの、子どもじみた願いを叶える為に強引に目の前に連れてきた。 何もかも奪ってしまった。 奪われたシモンは、全てを差し出してくれた。 最後には自分で決めたのだと言い切る忠臣。 本来なら、ファウストこそが丸ごと背負わなければならない強い決意。 国を背負うにはあまりにも心が幼かったファウストの場合、自分で決意して役割を受け入れたと言えるほど強い気持ちを持っていた訳でもなく、王家に生まれついた義務だと理詰めで納得できるほど諦められてもいなかった。 あえて言葉を当て嵌めるなら、誰もがそれを望んでいたので、他に道を見つけられなかったと語るしかない。 「これでは、ヨシュアの事をとやかく言えんな」 仰向いた首を起こしたところで、ヘルマンがティアラとヨシュアを伴って戻ってきた。 ファウストは、サイラスが持ち込んだ近辺の地図を広げたままにしているテーブルの前に二人を座らせた。
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