第四章

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      * * * 昨夜よりもいくぶん飾り気を増やして着飾ったファウスト王は、時間だと迎えにやって来た神官のサイラスに微笑みながら立ち上がった。 そして、妹姫のティアラと抱擁を交わし、その婚約者であるヨシュアには肩を叩いて親愛の情を示してしばしの別れの挨拶にした。 そんな愛情溢れる一幕を目の前に、進んで迎えにきたサイラスは、牧歌的な印象のウェイデルンセンらしい光景だと考えながら眺めていた。 我が君である自国の主は皇帝神という現人神であり、ある日突然、天から遣わされる存在とされているので、家族という概念は存在しないとされている。 仕える神官も、それに倣ってなのか、独身という制約が付いてくる。 もっとも、どちらも本当にそれを貫いているわけではなく、神官などは上役になるほど施しという形で別宅に愛人を囲っている者が増えるという矛盾した俗っぽい暗黙の了解がまかり通っている。 その点、国家丸ごと家族だと公言しているウェイデルンセン王国では、王族だろうと素直に情を示すのが当たり前の日常なのだろう。 アスラ以外の相手には血を通わせないと言われているサイラスであっても、どことなくほっこりと見守っていたくなる光景だったのだが、内実、三者が三様に後ろめたい状態だったのは当人達にしかわからない実情だった。 そして、サイラスの内心も、またウェイデルンセンの三人にはわからない事だった。
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