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「騒ぎにならない内に帰れよ。お喋りがしたかったら、別の機会にしてくれ」
もういいだろうと追い返すヨシュアだったが、ティアラの方がレイネを離さなかった。
「レイネ、一緒にいて」
「おい、ティアラ」
ヨシュアが冷静に説得を試みるも、ティアラは妙に頑固だった。
「そうね、せっかくお姫様が誘ってくれてるんだもの、お断りしては失礼ね」
困った風情だったレイネも、最終的にはお嬢様ぶって了承すると、びくびくしている可哀想な令嬢の友人に一人で帰ってもらった。
「さあ、これで帰る手段がなくなったわ。ここで追い返したら、不審人物ですぐ捕まるわよ。捕まったら、私は即ヨシュアの名前を出すけれど、それでも宜しくって?」
どこにいても、いつだってレイネはレイネだ。
「わかった。好きにしろ。但し、部屋から出るなよ」
「ヨシュアはどうするの?」
「自分の部屋にいる」
「ちょっと、客人を放っておくつもり?」
「何が客人だ。ティアラが引き止めたんだから、俺は知らない」
そう言って、ぞんざいに片手を振って部屋に引っ込んでしまった。
「まったく、なんなのよ」
一見、いつものヨシュアらしい態度だったが、レイネには一挙手一投足にわざとらしい嘘くささがまとわりついて見えていた。
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