第四章

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      * * * さっさと部屋に引っ込んだヨシュアは、閉めた扉にずるずるともたれてしゃがみ込んだ。 「今は、一人になりたくなかったのに」 何も知らないティアラと一緒ならばいつも通りの自分でいられて、ティアラを守る事だけ考えていれば余計な深みに嵌まる隙なんてできないで済むはずだったのに。 「なんで来るんだよ」 言葉にして恨んでみるものの、本当にはレイネを責めているわけではない。 ただ、そうしていないと真っ黒に染まってしまいそうな自分が怖いだけだった。       * * * 「ねえ、ティアラは何か知ってるの。ヨシュアがあんなに外面を悪化させてる理由を」 ヨシュアだけでなく、ティアラまでいつもと違う元気のなさを見てとったレイネは、二人きりの部屋でてきぱきとお茶の用意をしながら聞いていた。 「ううん、私にもわからない。でも……」 「でも?」 「見ちゃったから」 何を、と問われて、ティアラは昨夜から何度も繰り返している場面を一から思い返してみた。
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