第四章

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      * * * 「ティアラ、ティアラ」 低く優しい声に呼ばれて目を覚ましたティアラは、そこにいる人物を見て夢の中だと気付いた。 「寝ちゃったんだ」 明日のパレードについてファウストから再度呼び出されるまでの間、部屋でぼんやりしている内に眠りに落ちてしまったらしい。 「カミ、どうかしたの」 青々とした草原で寝そべっているティアラを覗き込む不思議な色合いの瞳に、今日は何か気にかかる事でもありそうな憂いが浮かんで見える。 「ああ、少しな。ヨシュアはどうしてる?」 「部屋でファウストに呼ばれるのを待ってるはずだけど」 「……そうか」 「何かあったの?」 「夢に入ろうとしたら、閉じられていた」 それは、嫌な知らせだった。 肉体的疲労や病気でもなければ、通常、夢が閉じられるという例はない。 レスターのように自らの意思で行うなど、相当な精神的拒絶をしなければ叶うものではなく、だとすれば、自然ではない眠り方をしたのだろうと考える他ない。 具体的な例を挙げるなら、薬の使用や気絶などで、どれも穏やかとは言えないものばかりだ。
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