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「様子を見てくる!」
「一人で行くなよ」
慌てて追いかけた忠告の言葉は、あまりティアラの耳に入っていなかった。
なにせ、目が覚めるなり、すぐさま部屋を飛び出すほど気が急いていたのだから。
廊下に出ると、通路の端に立っている護衛官の灯りがゆらりと揺れている。
まるで何事も起きていないように静かな夜だ。
それで、少しだけ冷静になったティアラは、騒ぎにならないように忍び足で隣室に向かった。
ヨシュアの部屋の前に立ったティアラは、手のひらで撫でるように扉を叩く。
人の気配に狼並みに敏感なヨシュアには、ノックさえもいらないくらいだ。
なのに、しばらくたっても何も反応がなかった。
途端に、引っ込んでいた不安が再び背中を這い上がる。
もし、慣れない緊張に疲れきって寝入っていただけだったら、騒いで起こしてしまえば絶対に怒り出すのは間違いない。
それに、ここはウェイデルンセンでもない。
ティアラの特別な加護は、この場所では通用しない。
それでも、このまま確認しないでいるのも難しいので、いくらか躊躇った後、慎重にそうっと扉に手をかけた。
鍵はかかっていなかった。
しんと静まりかえった薄暗い部屋の中、ティアラはささやくように婚約者の名前を呼ぶ。
何事もなければ、勝手に入るなと怒られるだけで、何かあるよりはその方がずっと良かった。
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