第四章

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      * * * 扉を背に、膝を抱えたヨシュアがどのくらいそうしていたかは自分でもわからなかった。 ひたすら努力していたのは何も考えない事。 ただ、それだけ。 我に返ったのは、扉の向こう側に立とうとする気配を察したからだ。 すぐに、丸めた背中にコツコツと振動が響いてくる。 「ヨシュア」 扉を挟んで、聞き慣れた高飛車に呼ぶ声がした。 「引き込もってないで、出てきなさいよ」 「そんなの、俺の勝手だろ」 ヨシュアは虚ろな瞳で言い返す。 「ここを開けて。私は目を合わせて話がしたいんだけど」 「無理だ」 間髪入れずに拒絶した。 「私が相手でも?」 「誰が相手だろうと」 さっきから全身が小刻みに震えている。 少しでも気を散らせば、この有り様だった。 もう少し、もう少しで終わるのだから、それまでは何も考えないでいたかった。 「そんなに怖いの?」 その声だけは、すぐ耳元で囁かれたように聞こえた。 相変わらずレイネは容赦なく、思わず、びくっと肩が揺れてしまう。 「これじゃあ、ティアラと別れるのも時間の問題ね」 続けられた言葉に、その通りだとざわめいた胸が沈んでいく。 沈んで、沈んで、どこまでも真っ逆さまに落ちていける気分を引き止めているのは、もう残り僅かとなった期限の存在だ。 自分には無理だった、前向きで明るい世界に歩き出そうとしているお姫様の為にもう少しだけ、陽の下にいる顔以外は見せたくなかった。
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