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「どうせまた、しょうもない事を考えているんでしょうね」
扉越しに引きこもりのヨシュアを相手にしているレイネは、ため息と共に本音をこぼした。
聞こえてしまってもいいと思いながら。
ヨシュアが考えていそうな事くらい、簡単に想像がつく。
それが無駄な恐れであるとも知っているけれど、レイネの言葉ではいくら丁寧に重ねてみたところで全然届かない事も残念ながら知っていた。
「馬鹿みたい」
自分が。
だけど、今回は少し違う。
あの唐変木の為ではなくて、親しくなった愛らしいお姫様の為。
すごく落ち込みながらも、部屋を出ていくレイネにヨシュアを助けてあげてとお願いしてきた女の子。
だから、もう少しだけ口を出してみる。
こつっと、扉を叩いて注意を引く。
「もういいだろ」
返ってきたのがこれだった。
もういいってなんだ。
レイネは前言を翻して、口だけじゃなく手も足も出してやりたくなる。
「俺はいいから、ティアラの側にいてやってくれ」
けれど、続けられた言葉を聞いて、飛び蹴りをかまそうとしていた足を止めた。
どうやら、全く見込みがないわけでもないらしい。
その分だけ、微かに胸が痛むけれど。
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