練乳

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今もこうして、いつもの冷たく凛々しい姿ではなく。 人間という名の、獣の一部である姿と。 忘れてはいけない本能で動く姿を、ボクの心に映す。 彼だけがボクに見せる、熱い瞳と欲情。 ボクだけに、ボクの体内(ナカ)に注いでくれていた。 こうして彼は。 ボクを彼のイロにゆっくりと紅く染める仕草は、とてもくすぐったいけれど。 視界だけじゃなくて。 脳の奥や、体液、心……ボクの全てを。 【練乳】のように、甘く甘く。 向こう側には、彼の熱い瞳しか見えず。 拒否なんて態度は、忘れてしまい。 あるがままの熱と色のついた液を。 受け止めて。 彼は、いつも簡単にボクを。 変える魔法を使える。 ボクをこんなに変えてしまっても、彼は他の誰かを抱くのだろうか。 そう思うだけで、体に力を入れようとしても。 上手く入るわけがない。 彼も生まれたままの姿で、ボクを優しく抱きしめ。 フッと、息を吐いた。
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