4人が本棚に入れています
本棚に追加
…あれから数か月。俺はいまだに、あの日見たもののことを彼女に聞くことができない。でもどうやら、真相を問う時期がきたようだ。
季節はもう十二月寸前。すっかり日が落ちるのも早くなり、寄り道を一切せずに帰っても、途中で辺りが暗くなる…そんな時期。
彼女の門限は五時だけれど、さすがに学校の用事がある時は、多少はそれを上回っても許されるらしい。
そういう、いつもより帰宅が遅くなる日に彼女を送れば、途中で当然日が暮れる。二人で夜道を歩くことになる。
街灯もない暗い道。細い月明かりでも明かりは明かり。ぼんやりと影が落ちる。
いつか見たのと同じ、彼女の姿形とは違う影。
彼女はこのことを知っているのか。知っているなら、その正体は何なのか。もし真相を知ったら、その後俺はどうなるのか。
何一つ判らないけれど、もう、好奇心には勝てず、人気のない道の真ん中で足を止める。
そして俺は、もしもの場合の覚悟を胸に、道路に落ちる影を指差しながら彼女への問いを口にした。
月光の影…完
最初のコメントを投稿しよう!