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悪魔の中の悪魔、悪魔男爵は迷子になり「お母さん。お母さん」と泣き叫んでいた。
折しも、沛然と雨が降り始め、男爵をしとどに濡らす。
お母さんから「マルボロを買ってこい」って言われたのに、駄菓子屋さんを探してもなかった。
男爵は肩を落としながらトルコ葉のブレンド煙草に火をつける。
「未成年なのに煙草吸ってる。悪魔だなオレは……」
そう呟いた後、誰かに肩を叩かれたのを感じ振り向くと――七三分けの頭に黒ぶち眼鏡をかけた若い――男が、ニコニコしながら立っていた。
男はヘラヘラと揉み手をしながら「罪深き子羊ちゃん、免罪符を買いましょう」と脅す。
状況に混乱した男爵は思わず言う。
「セブンスターが欲しい」
七三男は不敵な笑みを浮かべ、こう返した。
「おっとそいつは残像だ」
その一言を無視した男爵は、今夜の晩ごはんは玉子焼きがいいなと思った。もはや迷子になっていることさえ、忘れてしまった。暇なので何か悪魔的な行為を考え出そうとする。
(姿を消す魔法で人々の背後に忍び寄り、膝カックンをかますのだ~!)
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