君の面影が消えるまで。

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俺はなるべく彼の姿を目に止めないように……指さされた箇所に目を向ける。 「あー、ここはね……因数分解してから計算するんだよな。ちょっと厄介だけど……慣れたら簡単になるから。」 「……あー、はい。何か、分かりました。」 「あ、そう?それなら良かったんだけど。」 そう言って、彼の方を見ると……彼は嬉しそうな顔を見せた。 「……っ…。」 「ありがとうございます。葉山先生!じゃあ、また来週…お願いしますね。」 「あ、っ……あぁ、気を付けて帰れよ。」 「はい。先生もお気を付けて。」 ―――だから、顔なんか見たくなかったんだよ……。 段々小さくなって、消えていく後ろ姿を見つめながら……そんな事を思う。 はっきり言うと、水城湊は……俺が初めて本気で好きになった木田優希にどことなく雰囲気が似ているのだ。 ―――特に、笑った顔……。 正直、性格とかはまるで正反対。 静かで、落ち着いている。 高校生とは思えない、大人っぽさ。 それなのに、数学だけ苦手。そんな生徒。
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