君の面影が消えるまで。

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「俺が見ている葉山先生は……ただの塾講師の葉山健です。俺は、……先生が何が好きで、何が嫌いなのかさえ知らない。」 「え、……」 「だから、教えて下さい。俺に、先生を……葉山健自身を教えて下さい。」 ―――真っ直ぐに俺を見つめる瞳は……澄んでいて、あんなに優希先輩に似ているのに、その時だけは水城だった。……水城湊が、俺を見ていた。 「わかっ…」 「あ、次左です。」 「……うん、はい…。」 それから少しだけ会話を交わすとはもう水城の家に着いた。 「先生、今日はありがとうございました。本当に助かりました。」 「あー、いいよ。それじゃあ、頑張れよ。」 「はい!数学、頑張ります!それで、デートして下さいね!約束ですよ!」 「それはいいんだけどさ、数学だけ頑張るんじゃないぞ。他の教科もいつも通り取ってのデートだからな。」 「…はい、勿論です!じゃあ、先生……また来週お願いします。」 「分かった。」 そう言って、家の中に入って行った水城を見送り、俺も自分の家を目指した。
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