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「……俺はさ、塾講師になる前、元々リーマンやってたんだよ。その会社、面白い企画をやってて……とりあえず面接を受けに行ったんだよ。そしたら、そこにあの人がいた。」
―――綺麗で、儚げな雰囲気を醸し出す、優希先輩を。
「多分、一目惚れ。その時にもう…俺はあの人に恋してしまった。……でも、それだけじゃなくて、その人は俺の教育係になったんだ。そこで、俺のものにしたいって思った。だけど、あの人にはもう決まった人が居て、二人は愛し合ってた。」
―――初めて、恋が苦しいものだと知った。痛いものだと、感じたんだ。
「でも、諦めきれなくて……何度もアピールしたけど、無理だった。二人の仲を壊すことなんて、俺には出来なかった。で、ハッキリと振られて……俺は逃げたんだよ。」
―――そうだ。やりたい事が出来たなんて……あの時は嘘だった。……確かに、俺は教師になりたいと思った事は何度かあったが、あの時は違う。
これ以上、あの二人を見たくなかったんだ。
「ハハッ……バカだろ?いつまでもこんな未練引きずって……」
すると、目の前が一気に真っ黒になった。
―――どうやら、俺は水城の胸の中に居るらしい。
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