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男は少年の頬をなで、短く刈られた髪をなで、優しく微笑んだ。
少年はボンヤリした目で男を見つめた。
頬に触れた手がとても優しく、サラリとして心地よかった。
心の奥底で固まっていた氷が溶け出して、体に染みこんでゆくような、甘い感覚があった。
もう長いこと、誰にもそんなに優しく触れられた事はなかった。
優しく話しかけられることもなかった。
何かのご褒美なのだろうか。
少年は目を閉じ、無意識にその男の手に、自らの頬を寄せた。
『大丈夫。心配しなくていい。きっと全部、うまく行くから』
その声と共に、少年は再びその腕にふわりと抱きしめられた。
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