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大東和出版のラウンジは、初秋のカラリとした木漏れ日を窓から取り入れ、心地よい明るさを保っていた。
様々なデザインの椅子とテーブルが並ぶ、ゆったりとしたその空間は、打ち合わせや休憩、歓談の場として自由に使える。
社員からの評判も良く、長谷川や多恵も気に入ってよく利用していた。
午前10時。
先に来て横並びに座っていた長谷川と多恵は、後から入ってきたリクに手招きした。
いつもの事ではあるが、ラウンジ内で休憩や打ち合わせをしている社員は男女問わず、必ずこの青年に一瞬目を奪われる。
今日もTシャツにジーンズ、黒のカジュアルなジャケット。
いつものように飾り気のない服装だったが、そのしなやかに伸びた肢体と柔らかな動き、神聖さを感じさせる中性的な整った顔立ちは、その場を心地良い緊張で満たした。
『きっとウチが抱えているどのモデルも勝負にならないほど綺麗な男ですよ』と、ファッション誌の編集長に言わせるほど、リクの容姿は人を惹きつける。
みんなの反応を見て、多恵が、なぜか自分の所有物を自慢するかのように「ふふ」と笑うのも、いつものことだった。
「あんたさ、ちゃんとご飯食べてる?」
自分たちの正面の椅子に座ったリクに、開口一番、長谷川が訊いた。
リクがキョトンとして長谷川を見る。
「なんで」
「また痩せた。それに少し顔が青白い」
リクが返答に困っていると、長谷川の隣で多恵がニンマリした。
「やだ~、長谷川さん、なんかお母さんみたい」
「何でお母さんよ!」
長谷川が多恵を間近で睨んだが、この新入社員は全く動じる様子もない。
悪びれもせずに長谷川に笑い返し、今度はリクの方に身を乗り出した。
「だけど、私もちょっと心配だな~。やっぱり、あれから眠れないんじゃないですか? リクさん」
「……」
リクも長谷川も黙り込んだ。
春先の吉野宮神社での殺人事件がきっかけで強まってしまったリクの特殊能力が、リク自身を苦しめていることは、二人とも玉城から聞いて知っていた。
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