第一章 人の運命なんて所詮は金次第らしいです。

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俺の右隣にあった牢屋がスポットライトで照らされる。その中には太った中年の男性が入れられており、鉄格子をガンガンと叩いて何かを必死に訴えていた。 「た、助けろゴミどもおぉぉ!!何でこの俺がお前らみたいなクズどもの見世物にならなきゃいけないんだぁぁぁ!!」 そんな彼の姿を見た瞬間に観客席に笑いが巻き起こった。 司会者も口角を吊り上げながら解説を進める。 「彼は皆様に楽しんで頂くために我々が二十年間かけてわざわざ使えないカスに仕立て上げました。悪魔の皆様の食用にも、日々のストレスが溜まっていらっしゃる人の玩具にも好きなようにご使用頂けます」 その言葉を聞いて男の顔が青ざめた。必死の形相で汗や涙や鼻水を撒き散らしながら何かを叫ぶが、恐らく既に消音(ミュート)の魔法でも使っているのだろう。その様子は滑稽としか言えなかった。今日この日の為だけに生まれてきたことには少しくらい同情するが。 気がつくと既に入札は始まっていた。三万ファル四万ファルと徐々に値が上がっていき、最終的に五十万ファルで落札された。何かを叫び号泣する囚われの男と、運ばれていくそれを笑顔で見守る落札者。一見すると只のサラリーマンにしか見えない辺りにこの世界の闇を感じた。 『さて、それでは次の賞品をご紹介させて頂きます!』 女の言葉に全身が恐怖を訴えてきている。足が竦む。視界が揺れて、曇る。使えないからという理由で、人は人を売ることが出来るのが怖い。そもそも、道具として命を扱えることが恐ろしい。 ――いや、そんなのは只の後付けの口実で、本当は捨てられたことが不満なだけなんだ、きっと。
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