5人が本棚に入れています
本棚に追加
『え、えー……それでは一億ファルで、落札……ということで』
「一億二千万ファルでどう!?」
再び先程の仮面の女性が額を上げた。そんなに僕を落札したいのだろうか。二人の女性の間に挟まれているというのは男冥利に尽きるが、明らかに二人とも悪魔の類いなので全然嬉しくない。観客達は、固唾を飲んでもう一人の女性の動向を窺う。
「一億五千万」
『い……一億五千万!?』
司会者すら驚いている。一億五千万と言ったら、失われた星々の品々(ロストギャラクシア)の一つくらい軽く買える額だ。
仮面の女性は悔しそうに下唇を噛み締めていた。それがこの勝負の結論を指し示していた。
『それでは、一億五千万ファルで落札です!』
僕を入れた檻がステージから女性の元へと運ばれていく。もうこれからのことなどどうでもよかった。痛くなければ嬉しいな。苦しみがあるなら死ねればいいな。いざというときには舌を噛みきる決意を固めて、ゆっくりと瞬きした。
「それでは魔王様、これを城まで運べば宜しいですか?」
……魔王? 女性の側近らしき男が使ったその言葉に反応してしまう。
「ちょっと待て。その前にここを開けろ」
「分かりました、どうぞ」
最初のコメントを投稿しよう!