ピアノマン

2/10
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
僕は、ピアノ。 この家に初めて来たのは、20年くらい前の話。 一人娘が小学校の時、ピアノを習いたいと言い始めたのがきっかけだった。 運送業者のトラックに揺られて、家の前に到着したとき、一人娘の女の子は、目を輝かせて僕に駆け寄ってきた。 家のリビングに置かれた僕。 窓からは、近所の川の景色が見えた。 太陽の光が、キラキラと反射して、宝石みたいで。 河川敷には、黄色いタンポポの絨毯が眩しくて。 僕は、この家で幸せになれる。 そう思えた。 一人娘の女の子は、毎日僕の鍵盤を叩いてくれた。 それは、もう楽しそうに。 毎週金曜日が、ピアノの教室。 それまでに与えられた課題を、一生懸命、練習する。 その姿が、とても愛おしかった。 僕の鍵盤の音に合わせて、 春は、桜の花びらが踊る。 夏は、蝉しぐれが降る。 秋は、紅葉の葉が木枯らしに乗る。 冬は、雪が音もなく天から落ちてくる。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!