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僕は、ピアノ。
この家に初めて来たのは、20年くらい前の話。
一人娘が小学校の時、ピアノを習いたいと言い始めたのがきっかけだった。
運送業者のトラックに揺られて、家の前に到着したとき、一人娘の女の子は、目を輝かせて僕に駆け寄ってきた。
家のリビングに置かれた僕。
窓からは、近所の川の景色が見えた。
太陽の光が、キラキラと反射して、宝石みたいで。
河川敷には、黄色いタンポポの絨毯が眩しくて。
僕は、この家で幸せになれる。
そう思えた。
一人娘の女の子は、毎日僕の鍵盤を叩いてくれた。
それは、もう楽しそうに。
毎週金曜日が、ピアノの教室。
それまでに与えられた課題を、一生懸命、練習する。
その姿が、とても愛おしかった。
僕の鍵盤の音に合わせて、
春は、桜の花びらが踊る。
夏は、蝉しぐれが降る。
秋は、紅葉の葉が木枯らしに乗る。
冬は、雪が音もなく天から落ちてくる。
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