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彼女が来たのは、つい一週間前のことだ。
日付をたどれば本当に短い期間のはずなのに、一年前、二年前と言われてもすんなり受け止められる。
彼女が来て、私たちの時間は重いものへと一変した。
彼女がやってきたのは突然だ。彼女はクラスメイトが談笑したり、昼食を食べたり、居眠りをしたりというごく普通の昼休みを過ごしているときに突然教室の中に入ってきた。わたしもそのときは慌てて、家でしてこなかった数学の宿題をしていたのだ。
突然の来訪者にわたしは手の動きを止めて教卓の前で立ち止まった彼女を見ていた。それはわたしだけではなく、他のクラスメイトも同様だ。
黒くつややかな髪に、赤く燃えるような唇。涼しげながらも大きな瞳は、クラスメイトを魅了するには十分だった。
「誰? 転校生?」
一番前の席に座っていた田辺君が立ち上がり、彼女に駆け寄ろうとした。
彼女はなめるような目で彼女を見ると、その手を取る。
彼はこういうやつで、可愛い女の子を見れば見境なく近づこうとする。
「わたしは、黒川雪よ」
そう彼女は淡々とした口調で言葉を紡いだ。
「雪ちゃんか。可愛いね」
だが、彼女は言われ慣れているのか、全く表情も変えない。
「依頼を受けたの。あなたたちを殺してくれとね」
その言葉とともに、田辺君の胴体部分から何か赤いものが零れ落ちる。
CGでもない。それは本物の血だ。
あたりに悲鳴がかけぬけた。
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