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刑事はわたしからこれ以上の情報を聞けないと思ったのか、そう告げた。
わたしは頭を下げると、若いほうの刑事と一緒に視聴覚室を後にした。
理科室へ戻ると、次の生徒の名前を先生が呼び、連れていかれた。
理科室の中はしんと静まり返っていて、誰も話をしようとしない。
わたしたち以外は誰も見ていない少女。廊下にいた生徒も彼女を見ていない。
その彼女の現実感のなさに、夢だったのかと思ってしまいそうになるが、やはりどこを見渡しても田辺君の姿はどこにもなかった。
その日は学校側の判断で午後の授業は休みとなり、生徒全員が刑事から話を聞かれた後でクラスメイトは帰宅の途につくことになった。
いつもはばらばらに帰る生徒たちが今日だけは集団登校を義務付けられたかのように、一斉に理科室を出ることになった。
靴箱で靴を履き替えていると、クラスメイトの木村映美がぽつりと口を開いた。
「あの子、また明日も来るのかな」
「どうだろう」
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