第2章

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 僕がぶつかってしまったのはお店に来ていた別の大学生グループだった。 それも見るからに柄が悪い。 しまった…… 一番関わりたくないタイプに人にぶつかっちゃった…… 「す、すいません……。」 たぶん謝っても意味ないだろう。 その予想通り、僕がぶつかってしまった人は眉間にしわを寄せて僕の胸倉を掴んできた。 「はあ?すいませんでした?謝ってどうこうの問題じゃねえから!」 こういう時はおとなしく店員さんを呼ぶか、あるいは警察を呼ぶのが一番いい。 「あ、あのアキちゃん、店員さんを、」  ところが、僕が全部言い終わる前にアキちゃんが僕の胸倉を掴んでいる人の胸倉を逆に掴み、壁に叩きつける。 「おい、自分なにしとんねん。」 「いって!て、てめえなにすんだコラ!」 「それはこっちのセリフや。俺のツレになに手ェ出してんねや。あ?喧嘩売ってんなら高く買うてやるで。」 さっきも思ったけれど、関西弁で凄まれると迫力が二割増しだ。 そのうえアキちゃんは恰好が派手だから、より一層怖い。 「ア、アキちゃん、もうそれくらいで……。」 このままだと本当に喧嘩になっちゃう。 もし喧嘩になったりしたら、それこそ大変だ。  アキちゃんは僕の表情をちらっと見ると、絡んできた人の方をくるりと向いて思い切り舌打ちし、それからようやく手を離した。 「はよ失せろや。自分らの顔見てると無性に腹立ってくる。」 「っ、チッ!くそが!」 捨て台詞を残して逃げて行った人たちの姿が完全に見えなくなると、アキちゃんはふにゃっと表情を緩め、僕の頭を撫でてくる。 「なんやろな~あいつら~。真幸クン怪我せえへんかった?シャツの胸元ちょい伸びてもうたな。」 「え、あ、う、うん。あの、ありがとう……。」 さっきとはうってかわって人懐っこい顔になったアキちゃんに、僕は戸惑いを隠せない。 あんなに怖かったのに、今はこんなに優しそう……。 二重人格かって思うくらいの変わりっぷりだ。 「それにしても、真幸クン絡まれやすいんやなぁ。」 ちょっと困り顔で言いいながらアキちゃんは腕を組んだ。
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